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第九十二話 魔導剣士ロイ、堂々と切り抜ける

last update publish date: 2026-10-09 17:57:17

「ど、ど、ど、どうしようロイくん!」

「落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない」

 とはいっても……。

 いや、ここは正直にだ!

「彼女は俺たちの大切な仲間です! 実際、ストラスを討ち果たすのに貢献しました!」

 バッと、彼女のほうに手を向ける。ナンシアはもう、半獣化を解いていた。

「しかし……」

「しかしなんですか?」

「いや、だって人狼だぞ」

「それがどうかしましたか!」

 半歩進み出る。

「いやなあ、だって人狼だぞ……?」

 トーンダウンしたが、平行線だな。

「では、どうすれば彼女の善性を示せるか言ってください!」

「それは……なあ……?」

 互いに困った様子で視線を交わす官憲たち。困ってるのはこっちだよ!

「問題なしということでよろしいですね!」

「あ、ああ……」

「報酬は、明日受け取ります。行こう、みんな」

 ぞろぞろと、場を去る。ナンシアが手を握ってきたので、その手を握り返した。

 ◆ ◆ ◆

 ふう。せっかくの戦勝気分が台無しだ。

 まずは、早馬でストラスの情報をベイシック卿へ。アハ=イシュケに伝わるほうが早いだろうが、やらないのも、今までの付き合いから不義理だろう
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  • 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!   第九十二話 魔導剣士ロイ、堂々と切り抜ける

    「ど、ど、ど、どうしようロイくん!」「落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない」 とはいっても……。 いや、ここは正直にだ!「彼女は俺たちの大切な仲間です! 実際、ストラスを討ち果たすのに貢献しました!」 バッと、彼女のほうに手を向ける。ナンシアはもう、半獣化を解いていた。「しかし……」「しかしなんですか?」「いや、だって人狼だぞ」「それがどうかしましたか!」 半歩進み出る。「いやなあ、だって人狼だぞ……?」 トーンダウンしたが、平行線だな。「では、どうすれば彼女の善性を示せるか言ってください!」「それは……なあ……?」 互いに困った様子で視線を交わす官憲たち。困ってるのはこっちだよ!「問題なしということでよろしいですね!」「あ、ああ……」「報酬は、明日受け取ります。行こう、みんな」 ぞろぞろと、場を去る。ナンシアが手を握ってきたので、その手を握り返した。  ◆ ◆ ◆  ふう。せっかくの戦勝気分が台無しだ。 まずは、早馬でストラスの情報をベイシック卿へ。アハ=イシュケに伝わるほうが早いだろうが、やらないのも、今までの付き合いから不義理だろう。 そして!「飯にするぞ!」「おー!」 宿屋で、意気を上げる。ナンシアは……気丈だな。あんなことがあったのに、拳を突き上げている。「店主、パーっといきたい! 酒と、それに合うものを」「いいですよー。腕によりをかけますねー!」 そう言って、厨房に引っ込んで行く。「兄貴。景気よく行きたいとこだけど、懸念が」「盗賊ギルドのことだろ?」 こくりと頷く義妹。「喧嘩売っちまったもんはしょうがないわな。せいぜい気をつける! これだけだな。なるべく、集団で行動するとか」「楽天的っすねえ~」「今更悲観してもしょうがないだろう」 そんな掛け合いをしていると、トマトとチーズの前菜と白ワインが運ばれてきた。「カプレーゼ。食前酒と相性抜群ですよー」 ほう、どれどれ……。 むう! これはさっぱりしている! どのぐらいさっぱりしているかというと、長旅から帰ってきて、やっと宿で湯浴みしたような!「まだまだいきますよー。ポリポ・アッラ・ルチアーナ。パンにつけて食べると美味しいですよー」 今度は、トマトソースの煮込みとパン。 まずは一口、試してみよう。 

  • 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!   第九十一話 魔導剣士ロイ、暗夜王と相対する ―後編―

     さあ、どうする!? まずは、皆の無事を確認だ!「みんな、無事か!」「おう!」「はい!」 五人から声が返ってくる。オーケー。「明光魔灯」 魔導書とバインダーを見ずに探り当てるのはいつもやっていることなので苦もなくできたが、魔導書のめくれる音はすれど、魔法の明かりがつかない。 まずいな。こいつの作り出す闇が、絶対的ということか。 魔導書を落としたら、とてもまずいことになる。慎重に扱わねば。 そんなことをしている間にも、羽根がダーツのように飛んでくる!「とりあえず、地面に引きずり落とさせてもらう! 強重結縛糸!」「ホー!?」 バサバサと羽ばたき、抗うストラス。どちらが勝つか! 地面に引きずり落とせないと、ただでさえ厳しい局面が、さらに厳しくなる!「ホー!!」 よし! 勝ったッ!「やってくれたホーね……。お返しホー!」 翼を広げるストラス。羽根ダーツが、さらに数を増して飛来する。 今、人垣が仇になっている。範囲攻撃とすこぶる相性が悪い。「ロイさん。わたしなら、戦場が見えてますよ?」 そう言うのはクコ。「なんだって! それは本当か!?」「エルフは、暗闇でもものが見えるんです」 先に言ってくれよ。「ナビゲートしてくれ。動きが取れん」「はい!」 クコの指示で、ゆっくりストラスに接近を試みる。「ホー!」「きゃっ!」 パティの悲鳴!「大丈夫か!?」「はい! 鎧で防げました!」 不幸中の幸い、魔法ではないのか。「悪いが、文字通り矢面に立ってくれ!」「はい!」 クコの誘導で、じりじり距離を詰めていく。 接敵! 賦術火炎刃の熱は、剣から感じる。いけぇ!「オラァ!」「ホー!!」 手応えあり!「やってくれたホーね……」 スゥ……っと消えるストラス。おい! 消えんな!「ロイさん、右!」「ここかぁッ!」「ホー!」 またも手応えあり! 持つべきは、エルフの仲間だな!「ホー……」 またも消えるストラス。「そこぉッ!」「ホーッ!?」 打撃音! ナンシアの声だ!「お姉ちゃんだって、鼻でわかっちゃうんだからね!」 人狼の仲間も、持つべきだな!「許さないホー……。許さないホーッ!!」 絶叫

  • 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!   第九十話 魔導剣士ロイ、暗夜王と相対する ―前編―

     あれから、約一ヶ月。「スティング・ホーネットだな! 逮捕状がでている!」 宿で朝食をいただいていると、突如官憲の旦那方が怒鳴り込んできた。 まったく身に覚えのない話だ。いや、待てよ?「こちとら、身に覚えのない話だな! あんたらの根城で、白黒ハッキリさせてやろう!」 パーティーメンバーに目配せ。……うん、察してくれたようでなにより。  ◆ ◆ ◆ 「手荒な真似をして済まなかった」 開口一番、本署で一階級上と思われる人が謝罪。「サンが、尻尾を掴んだんですね?」「うむ。今夜、六つの鐘で突入。君たちにも、手伝ってもらいたい」「そりゃ、願ってもないことで」 愛しのマイシスターと、やっと合流できる。こんな嬉しいことはない。「ほかの取り決めは?」「ない!」「なら、搦手攻めさせてくださいよ。俺ら、そういうの得意なんで」「むう? 構わないが」 こうして話はトントン拍子に進み、詰め所で夜まで待機することになった。 昼飯のスパゲッティー、まあまあだったな。宿の食いたかったなあ。まあ、ただ飯に贅沢言えんか。 そして、六つの鐘。 夜の帷が降りようとする中、出撃準備を進める。「おい、スティング・ホーネット! どこへ行く!?」「搦手から攻めるって言いましたよね! あとで合流します!」 言うが早いか、さっさと下水道の入口に立つ。 紙を一枚落とすと、賦術火炎刃をかける。紙にかけちゃいけないという決まりはない。 すると、地下道がメラメラと燃え始めた。 下水道には、可燃性のガスが溜まっている。それを利用させてもらった。 幹部は、下水道から逃げるはずだ。それを防がせてもらう。「官憲と合流するぞ!」 踵を返し、突入地点へ!  ◆ ◆ ◆  大捕物が始まっていた。盗賊団は軽装の者が多いが、重装の者もいる。「賦術火炎刃!」 今度は正真正銘、武器にかける。「超力賦活草!」 二大強化魔法がかかった! パワーみなぎる!「サン! どこだサン!」 群衆の中に突入し、最愛の義妹の名を呼ぶ。ロイドさん、あなたの気持ち、ちょっとわかるよ。心眼は持てないけどね! 敵を斬り伏せながら、パティを先頭に突き進んで行く。パティは小剣だ。この大乱戦では、長槍は役に立たない。

  • 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!   第八十九話 盗賊少女サン、孤独な闘いをする

     視点は、ロイからサンへ移る。 陰気なスラムを、用心深く歩く。 死体の髪の毛を抜いてカツラにしようとしてる痩せこけたババアなど視界に映り、気が滅入る。兄貴に出会わなかったら、オレもずっとこの世界の住人だったものな。 目当ての建物に着くと、階段を降りる。いかにも、盗賊たちの住処という感じだ。 こんこん、ここここんと、独特のリズムでノック。「何の用だ」 男の声が返ってくる。「最近景気悪くてよ。景気いい話はないかい?」「よそをあたりな」「じゃあ、三日後にまた来る」 そう合言葉を言うと、ドアが静かに開いた。「なんだ、ちっこいの」「ちょいと仕事したいんで、お見知りおきをってね」 番人に、そう返す。「金は?」 奥まった座にかけている人相の悪い男が言う。「これでいいすか?」 小袋を取り出すと、じゃらりと音がなる。「数えろ」「へい。ひい、ふう、みい……きっちり、金貨十枚」「まァまァだな。よし、こっちに来い」 まずは、第一関門クリア。ここから、ヤクの売人に、ありつけるかどうか……。  ◆ ◆ ◆  まず、スリの下っ端として活動することになった。 アテが外れたが、ここからだ。 裕福そうな奴がいたら、ちょいと頂戴する。兄貴と出会うまで、毎日やってたこと。 心が痛むかっていったら、今じゃ痛むけど、ギルドの信頼を得ないといけない。 今は、耐え忍ぶとき……。  ◆ ◆ ◆  ある日、吉報が舞い込んだ。ヤクの売人が大量検挙されたらしい。 しかし、ギルドとしてもヤクはデカいシノギ。はいそうですか、とやめるわけがない。 ギルドにとっては幸運、官憲にとっては不運なことに、幹部までは捜査の手が及ばなかったので、ヤクの売買は継続。穴埋め人員に、ギルドにとってはどうなってもいい、オレら下っ端が配属された。「クスリを……クスリをくれ! 銀貨十……いや、十二枚出す! 駄目なら十三枚だ!」 暗がりに立っていると、男がヨロヨロ近づいてきた。これは……! 内通者と取り決めていた符丁。十、十二、十三。「オレが売人に見えるのか? 男娼のほうが、まだ見えるだろ?」 こちらも符丁で返す。「あんた、クスリの匂いがするんだなあ……。なあ、頼むよ」 これも符丁。官憲の旦那、あんたいい役者になれるぜ。「……金貨で一枚だ」「金貨一枚! 無理だ!」「じゃあ

  • 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!   第八十八話 魔導剣士ロイ、心配する

     重い沈黙が続いている。 例の依頼票を手に、官憲の窓口にやってきたわけだが、「では、どうすればいいか」で止まってしまった。「我々は、潜入捜査のプロではありません。手法を共有していただかないと」「それは……」 無茶な要求だというのはわかる。官憲のノウハウをばらせと言っているのに等しい。 困ったな。せっかく高まった士気が、萎えてしまうではないか。「兄貴。平行線っす。オレがやってみるっすよ」「サン! 駄目だ、お前だけ危ない目に合わせるわけには」「蛇の道は蛇っていうっすよね。オレが適任だし、言っちゃなんだけど、頭数が多くても邪魔っす」 サン……。「昨日はああ言ったけど、兄貴の気持ちわかるっす。放置してていいもんじゃないっす」「……危ないと思ったら、すぐに逃げろよ」 強い意志を秘めた瞳に、そう告げるしかなかった。もともとは、俺が言い出したことなのに。「官憲の旦那。この国で、おとり捜査はアリっすか?」「あ、ああ」「なら、やりよーはあるっすね……」 考え込む義妹。 やっぱりやめよう。そう言いたいのを、ぐっと飲み込む。言い出しっぺの俺がそんなフラフラした態度じゃ、かえってサンの決意に失礼だ。「旦那。オレを盗賊ギルドに入ってるやつと同じ房にブチ込んでくれっす。そこから、ツテを作るっす」「なっ……!」 一同絶句。「あと、内部に潜入者がいるはずっすね? その人のことを……」 ポンポン段取りを決めていく。それに対し、唇を強く噛むしかできることがなかった。 昨日のヤク中女の顔が脳裏に蘇る。麻薬の蔓延を放っておいていいものではない。しかし、だからといって、サンだけを危険な目に合わせていいのか? 確かに、盗賊のイロハを知るのはサンだけだ。俺らがいても邪魔なだけというのもわかる。だが……。「わかった。来てくれ」 懊悩している間に、サンと官憲の間で話がついてしまった。「サン!」 官憲とともに立ち去る義妹に、思わず声をかける。「あの、その……。気をつけろよ!」「もちろんっす!」 にかっと微笑んでサムズアップする彼女。嗚呼……。 二人が見えなくなると、すっかりぬるくなった紅茶を、震える手で口に運ぶ。 せめて、いや、絶対に無事戻ってきてくれ!  ◆ ◆ ◆  視点はロイからサンに移る。

  • 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!   第八十七話 魔導剣士ロイ、巨大鹿と戦う

     早朝、依頼票を見に行く。ベル嬢の依頼があるが、ついでにこなせるものがあるなら、こなしておきたい。 ……? 麻薬密売組織の壊滅? 穏やかじゃないな。依頼人は官憲。おいおい、冒険者に頼るとか大丈夫か?「うっへ」 変な声を出すサン。「盗賊ギルドのシノギっすよ、これ。ルンドンベアにも多少出回ってるらしいっすけどね」「この依頼、受けたいのか?」「むしろ、関わり合いになりたくないっすね。命がいくらあっても足りないっす」 何かと前向きなサンが、この様子とは。かなり、アンタッチャブルな案件のようだな。 とりあえず、これは置いといて……。むむ? 巨大鹿狩りとな?「これ、どうだろう?」 農作物に、かなり被害が出ているらしい。「いいのではないでしょうか」 フランがまず快諾。アンデッド退治が混入してなくてよかった。 ほかの皆も、異存なさそうだ。  ◆ ◆ ◆  依頼人から正式に依頼を受け、森の中を、慎重に風下になるように進む。枯れ枝なども、踏まないように注意。皆には、飛び道具を配ってある。 聞くところによると、身の丈四メートルとか。厄介だなあ。 先行していたサンが、静止の合図を出す。……いた! たしかにでけえ! さらに慎重にスニーキングして、射程距離まで近づく。 一斉射! 命中! 的、でかいもんな! 雄叫びを上げる鹿。逃げ出すので、強重結縛糸をお見舞いする。自重で、動けなくなるはずだ!「いくぞ!」 クコから超力賦活草をもらい、接近戦に突入! 鹿も、角や蹄で応戦してくる!「包囲するぞ!」 五方向から取り囲む! ちなみに賦術火炎刃を使わないのは、肉が売れるのでは? と思ったからだ。依頼人いわく、いい果物をたらふく食ってるらしいしな! ナンシアの拳! サンのダガー! パティのショートソード! フランのモーニングスター! そして、俺の魔剣が五方向から襲いかかる!「角と後ろ足に気をつけろよ!」 これだけのデカブツの攻撃、食らったらえらいことだ!「盾を! ボクが囮になります!」「信じるぞ!」 ベルトポーチから盾を渡すと、鹿の攻撃をガッツリ受け止める。さすが、ハムロータ兄貴のチョップを受け止めただけはあるな! くそ! 脚の腱を切りたいが、めちゃくちゃに暴れ

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